契約当事者が死亡した場合について

売買契約の締結後に当事者の一方が死亡した場合、契約の効力はどうなるのかの間題があります。

 

売買契約が一旦締結されれば、たとえ当事者の一方が死亡しても、契約の効力は失われません。

 

契約の締結によって、当事者には一定の権利義務が生じますが、当事者の死亡によって相続が開始され、それらの一切の権利義務を相続人が承継することになります。

 

死亡した者(被相続人) の有していた権利義務、すなわち売主であれば代金支払請求権、目的物の引渡義務、登記の移転義務、買主であれば目的物の引渡請求権、移転登記の請求権、代金支払義務などについて相続人が承継することとなります。

 

買主が死亡した場合、売主は相続人全員に対し売買代金の支払を請求し、買主の相続人は単独相続の場合には目的物の全部について、共同相続の場合にはその相続分に応じた持分について所有権の移転登記を請求することとなります。

 

また、売主が死亡した場合に、売主の登記移転義務はその相続人が承継し、この義務は不可分債務であるゆえに相続人全員が登記申請者とならなければなりません。

 

もし、相続人中に登記申請に協力しない者がいるときには、その者に対して移転登記請求の訴えを提起せざるを得えません。

 

勝訴判決の確定により、買主は移転登記の申請をすることができます。

 

もっとも、売主側の共同相続の場合、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があり、または、共同相続人間で遺産分割協議が整い、その目的物件を取得する者が決まったときには、買主は、その者を相手に目的物件の引渡しや移転登記を請求することができます。

 

 

契約上の権利義務を承継した相続人が、その義務を履行しない場合、又は、反対に相手方が義務を履行しない場合における法律関係は、契約当事者が死亡した場合と通常の場合と異なるものではないですが、共同相続人から、又は、共同相続人に対して契約を解除する場合には、相続人全員から、又は相続人全員に対して、解除権を行使する必要があります。