隣から越境してきた枝や根について

隣の庭から木の枝が伸びてきて、という経験はないでしょうか。「こちらの敷地に侵入してきているし、枝くらい自分で切ってしまってもいいだろう」と思うかもしれません。

 

これまでは、民法によって、たとえ枝1本であろうとも、所有者でない者が勝手に切除することはできませんでした。危険を感じるような場合であっても、越境してきた枝は所有者に切除してもらうしかなかったのです。

 

しかし、2023年4月に改正民法233条が施行され、条件を満たした場合、越境してきた枝を自分で切除することが可能になりました。

 

改正前の条文には、枝が境界線を超える場合、相手に「切除させることができる」としか書かれていませんでした。しかし改正後は越境された側が「枝を切り取ることができる」と明言されています。

 

ただ、もちろん無条件に切って良いのではなく、越境している側が「催告」に応じなかった場合や、竹木の所有者がわからない場合、急迫の事情がある場合などに限定されます。

 

催告とは、竹木の所有者に対して「越境している枝をこの日までに切ってください」と伝えることです。できれば、内容証明郵便などを用いて、催告をした証拠を残せると良いです。切るのに十分な期限(基本的には2週間程度)を設定したにもかかわらず、期限までに竹木の所有者が切除しなかった場合は、越境された側が相手方の同意なく枝を切除することができるようになりました。

 

※参考→改正民法233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
 

では、切除にかかった費用は請求可能なのでしょうか?

 

催告後、自分で業者などにお願いして切除をした場合、その費用は請求できるのかという疑問が残ります。結論としては、相手方に請求できます。ただ、費用の請求に関しては233条から離れ、別途裁判で請求を認めてもらう必要があります。

 

たとえば、30万円ほどかけて枝を伐採したとしましょう。その費用を相手方に支払わせるためには、弁護士を立てて裁判をしなくてはなりません。30万円程度だと弁護士費用だけで、それに近い金額またはそれ以上の金額になる可能性もあります。裁判の結果が出るまでに時間も手間もかかるので、30万円のためにどこまで費用や時間などを費やすか否かは慎重に判断が必要です。

 

また、隣の所有者と連絡がつかない場合は結局何もできませんので、まだまだ課題が残りそうな改正民放233ではありますが、とりあえずは越境物の解決になる方も多いと思います。