大家業(家賃収入)をこれから始めたい方にとって、最初の一歩は期待と不安が入り混じるものです。
不動産を「買う」ことと「運用する」ことはまったく別物で、成功のためには冷静な判断と計画性が欠かせません。
ここでは、不動産業者の立場から、初心者が押さえておくべき基本と実践的なポイントをお伝えします。
■ 1. まず「目的」をはっきりさせる
大家業を始める目的は人それぞれです。「老後の安定収入を得たい」「相続対策をしたい」「資産形成の一環として運用したい」など、方向性によって選ぶ物件や資金計画は大きく変わります。
例えば、安定重視ならファミリー物件を長期保有するのが有効。一方で、短期間で収益を狙うならリフォームして転売(要宅建業免許)も選択肢になります。
まずは「何のために」「どれくらいの期間で」「どの程度のリスクを取るか」を明確にしましょう。
■ 2. 資金計画は“余裕を持って”が鉄則
不動産投資では、自己資金だけでなく金融機関からの融資を活用するのが一般的です。ここで注意したいのが「返済比率」と「空室リスク」です。
家賃収入が返済額ギリギリだと、1~2カ月の空室や修繕費で簡単に赤字になります。安全圏は、ローン返済が家賃収入の6割以内に収まることを目安に。
さらに、急な修繕や退去に備えて家賃の3~6か月分を“予備資金”として確保しておくと安心です。
また、融資を受ける際には、金利や返済期間だけでなく、保証料や手数料も含めた「実質利回り」で判断しましょう。
■ 3. 立地選びは「駅距離」よりも「需要」を見る
初心者がやりがちなのが、「駅近だから安心」と思い込むことです。確かに立地は大切ですが、それ以上に見るべきはその地域にどんな人が住みたいかという“需要の質”です。
たとえば、大学が近いエリアなら単身者向けの1K、工場地帯なら社宅ニーズ、子育て世代が多い郊外なら2LDKや戸建て賃貸など、地域によって需要はまったく違います。
地元の不動産会社にヒアリングしたり、SUUMOやアットホームなどの賃貸サイトで「募集期間の長い物件が多いか」を調べるのも有効です。
■ 4. 購入時は“表面利回り”に惑わされない
よく物件広告で「利回り20%!」などと書かれていますが、これは**満室時の理論値(表面利回り)です。実際の経営では、管理費・修繕・税金・空室などが発生します。
これらを差し引いた実質利回り(ネット利回り)**で判断するのが基本です。おおまかな目安として、表面利回りが20%なら実質は15%程度になることが多いです。
利回りだけでなく、建物の状態や今後の修繕計画、周辺の競合状況なども総合的に見て判断しましょう。
■ 5. 管理は「自主管理」か「委託」かを検討
物件の管理方法も重要なポイントです。
自主管理:家賃集金やクレーム対応を自分で行う。コストは抑えられますが、手間と時間がかかる。
管理委託:不動産管理会社に任せる。費用(通常は家賃の5%前後)がかかりますが、安心感があります。
初心者のうちは、まず管理会社に任せて流れを学ぶのがおすすめです。信頼できる会社を選ぶには、対応スピードや報告の丁寧さを確認しましょう。
■ 6. 入居者募集はスピードと柔軟性がカギ
空室対策では、募集条件の“柔軟さ”が成果を左右します。家賃を下げる前に、設備の改善や敷金・礼金の見直し、インターネット無料化などを検討しましょう。
また、写真の撮り方や広告文の工夫も効果的です。最近はSNSや動画内見も増えており、時代に合わせた集客が重要になっています。
■ 7. 長期目線で「資産価値」を守る
建物は年々劣化しますが、適切なメンテナンスを行えば価値を維持できます。外壁や屋根の塗装、共用部分の清掃、定期的な設備点検などを怠らないことが大切です。
また、時代に合わせてリフォーム・リノベーションを行うことで、家賃を下げずに入居を維持できるケースも多いです。
単なる“家貸し”ではなく、“商品としての不動産”を意識することが成功へのカギです。
■ 8. 税金・法律の理解も不可欠
大家業では、所得税・住民税・固定資産税などの知識も必要です。特に経費計上のルールを理解しておくと節税効果が大きく変わります。
青色申告を選択すれば、最大65万円の控除が受けられるほか、家族を給与で雇用することも可能です。
また、民法改正や賃貸借契約のトラブルに備えて、専門家(税理士・司法書士・宅建業者)と連携できる体制を整えておくと安心です。
■ まとめ
大家業は「不労所得」と思われがちですが、実際は労働も必要です。物件の状態や入居者との関係、地域の需要を常に意識し、丁寧に運営していくことが成功の秘訣です。
初めは分からないことも多いですが、信頼できる不動産業者や管理会社と二人三脚で進めていけば、安定した収益と安心感のある資産運用が実現できます。
焦らず、学びながら育てる気持ちで取り組んでいきましょう。




