不動産売買における「告知事項」について

「告知事項」のある物件とは
まず【告知事項】とは、契約前に必ず確認が必要な内容です。実際にどのような内容が告知事項となるのか、チェックしていきましょう。

〇何かしらの訳あり物件である

告知事項があるということは、その物件は何かしら問題を抱えている、という状態になります。告知事項ありの物件は、一般的に『事故物件』『心理的瑕疵物件』『訳あり物件』と呼ばれ、現状は人を選ぶ不動産として認知されているのが現状です。

インターネットで情報収集をする際、掲載物件の良し悪しは掲載されている物件写真を重要視している方がほとんどなのではないでしょうか。ところが、実際に告知事項ありとなっている物件写真は、何が問題なのか判断が付かないほどきれいな状態の写真が掲載されていることも多いのです。

購入者は広告上で告知事項の内容まで深堀りすることができません。

〇相場の価格より安くなっていることが多い

告知事項ありとなっている物件は、価格相場を大きく割り込んだ価格設定がされているパターンが多く確認されます。
値段だけに注目しながら検索結果を追っていくと、突然相場より2~3割もお安い物件が現れるため、その低価格に目を疑う方もいるのではないかと思います。

しかし相場より安いのは瑕疵の内容や状況に影響されるため一概には言えません。

〇いわゆる事故物件であることが多い

告知事項がある物件のことを【事故物件】と呼ぶようになった背景に、居室内にて様々な事情で死亡事故が発生しているという事実があり、今では業界用語として定着しています。
事故物件を見分けるためのホームページも存在しているため、気になる方は事前に調べておくと良いかもしれません。

【目次】

・告知事項の種類

・告知事項を説明しなければならない期間

告知事項の種類
【告知事項あり】と記載される理由は事故物件だから、というだけではありません。告知事項にはいくつかの種類があります。
告知事項部分が『いわく付き物件』『訳あり物件』とマイルドな表記とする場合もあります。

〇自殺や殺人など

まずイメージされるのはこれでしょう。【心理的瑕疵】と呼ばれています。
過去に死亡事故が発生している物件に住むとなると、多くの人は嫌悪感を抱くことと思います。この心理的な抵抗感のことを心理的瑕疵と言って、生活に影響を与える可能性が高いと思われます。
殺人事件や死亡事故、自殺などの不審死が発生している物件には心理的瑕疵が発生するため、告知義務が生じることになります。

自然死であったとしても、死後~発見までの時間経過により、遺体の状態が悪く特殊清掃が発生してしまった場合などでは告知する義務があるので、売主・貸主からの説明が必須となるのです。

〇漏水や土壌汚染など

次は【物理的瑕疵】です。大雨や地震、火災などの影響で建物自体に受けたダメージが未解消の状態であることを言います。
物理的欠陥があると、契約後すぐに修繕が必要になってしまう可能性も十分に考えられます。
賃貸であれば、原則として賃貸人が修繕義務を負担するよう定められています。
しかし、契約書の特約に修繕義務を免れることができるような契約内容を記載することも可能です。
また、工業系の用途地域にて土地や建物を売却する予定であれば、土壌汚染にも注意が必要です。一般売主の特約には契約不適合責任免責を盛り込むことは可能ですが、売主が商業者であれば数か月から数年の契約不適合責任を負う期間があります。土壌汚染が気になる場合、一般的には調査が必要ですが、調査費用負担を売主・買主どちらでするか決めておきましょう。

〇行政のルールに抵触している

次は【法的瑕疵】です。法律により建物に使用制限がかかっている状態のことを指します。
ここで言う法律とは『建築基準法』『消防法』『都市計画法』などが当てはまり、容積率や建ぺい率、防火扉、避難はしごなどが適切に適用・設置されているかなどがチェックのポイントです。
また、法的な制限がついていることによって建物の建て替えができない『再建築不可能』な物件も法的瑕疵物件の一つ。昔からの下町や法施策の前に建てられた中古物件がこちらに該当する場合が多く見られます。

〇周辺環境が悪い

該当物件の周辺環境が劣悪な状況である場合、【環境的瑕疵】が適用となる可能性があります。
周辺環境の状況は、暴力団・宗教団体の施設の有無から、異音、騒音の状況なども含めて判断基準としています。
生活を送る上で必要だとしても、自分の住んでいる家の近くにあると住むことを躊躇してしまうような施設と言われると、どんな施設を思い浮かべるでしょうか。

火葬場、ゴミ処理場、下水処理場、発電所、養鶏場、養豚場などが思い浮かぶ方は多いのではないかと思います。
また、保育園や幼稚園、学校に関しても人によっては騒音が気になり、生活スタイルによっては環境的瑕疵になり得る建物となります。

告知事項を説明しなければならない期間
不動産業者には、このような瑕疵が発生した不動産の購入希望者に関して、物件説明の義務が生じます。また、どんなに伝えづらい内容であっても必ず告知事項として重要事項説明書に記載し、説明が必要になります。
この説明義務は、一体いつまで有効となるのでしょうか。

〇心理的瑕疵の告知義務期間は、瑕疵発生から3年間(賃貸の場合)

国土交通省にて令和3年10月8日に策定された『人の死の告知に関するガイドライン』によると、このようないわゆる『事故物件』の告知事項は、賃貸の場合3年間と言われています。
病気や老衰による自然死であっても、ご遺体の状況や事故死と自然死の区別がつかない場合は告知義務が発生します。
また、建物外で発生した事故は告知義務の対象外となります。

≪参考≫宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(国土交通省)

〇売買契約の場合、経過期間に関わらず告知義務がある

先ほどは賃貸の場合の告知義務をご紹介しました。
一方で売買契約の場合には、いかなる内容であっても期間によって告知義務がなくなることはありません。
これは『人の死の告知に関するガイドライン』がトラブルの未然防止を期待するために策定されたものであるという視点から、賃貸物件よりも売買契約の方が契約金などの額が大きく、トラブルへ発展した際の経済的影響が大きいと考えられるためです。

入居後に瑕疵があると判明した場合は、不動産業者の説明義務違反となり、契約解除や損害賠償請求も可能となります。引っ越し代金も請求可能とはいえ、短期間で何度も引っ越しを繰り返すのは、肉体的にも精神的にも負担が大きいものです。

〇金銭的に負担の大きい物件に対してはより厳しい

不動産の告知事項説明義務違反の判例において、売買契約時の告知期間については特に厳しい現状となっています。

20年前に自殺が発生した物件に関しての告知義務違反が認められ、慰謝料の支払いが決定した判例があるほど、特に心理的瑕疵に関しては、瑕疵の内容や入居状況などをもとに個別に判断されることも多いようです。
原則は契約書を取り交わす前の『重要事項説明』において告知をすればよいとされています。

〇自然死などは告知しなくてもいいとされている

心理的瑕疵について、自殺や不審死が発生した物件には告知する義務があります。
しかし、老衰についてはどうなのでしょうか。
こういった、直接的な原因がなく身体機能の衰えによる死は『自然死』と定義され、告知の義務はないとされています。

日常生活を送る上で起こってしまった家庭内事故が原因による、階段からの転落死や浴槽での溺死、誤嚥による窒息死などに関しても、すぐに病院に搬送され死亡確認となった場合も告知する義務はなくなります。

しかし、自然死であっても時間が経過してからの発見、特殊清掃が必要になる状態で発見された場合などに関しては告知が必要な事項に該当します。

最後に・・
告知事項は必ず告げなければなりません。

告知事項があるのに言わなかったり、調べればすぐわかるようなことを調べずに告知事項を告げられなかった場合も損害賠償等求められてしまう場合があります。

もし告知事項と思われるようなことがある場合は迷わずまずは不動産業者に相談してみてください。

当事務所では秘密厳守で相談を受け付けておりますのでお気軽にご連絡下さい。